活動報告

講演会「再審法改正と言論の自由:証拠の目的外使用禁止のあり方を考える」を開催しました

2026年10月4日、武蔵野商工会館4階ゼロワンホールにて、講演会「再審法改正と言論の自由:証拠の目的外使用禁止のあり方を考える」を開催いたしました。

講師には、弁護士・元検察官・元衆議院議員の山尾志桜里さんをお招きしました。また、本講演会の開催にあたっては、NPO法人うぐいすリボンにご協力いただきました。

再審法改正というと、刑事司法に関わる専門的なテーマに感じられるかもしれません。しかし、裁判の証拠を社会に伝えることへの制限は、冤罪救済だけでなく、報道や研究、そして市民が問題を知り、声を上げることにも関わります。

今回は、証拠の「目的外使用禁止」を中心に、プライバシーの保護と、言論の自由・知る権利をどのように両立させるのかを考える場として企画しました。

冤罪救済と証拠開示

講演の冒頭では、山尾さんが検事を志した原点と、検察の仕事に向き合う中で感じてきた問題意識についてお話しいただきました。

被害者の声を代弁する仕事への思いとともに、証拠が有罪の主張を支えないのであれば、検事自身が無罪を求めるべきだという姿勢。その一方で、組織として一度行った判断を見直すことの難しさについても、元検察官としての経験を交えた説明がありました。

続いて、袴田事件を振り返りながら、冤罪の救済に長い年月がかかったこと、そして証拠の開示と、それを検証する支援者や社会の動きが持つ意味について考えました。

山尾さんは、証拠が開示されることと、開示された証拠を社会に伝えることを、つながりのある問題として捉える必要があると指摘されました。裁判の中で証拠が出てきても、その問題点を社会が知り、検証する機会が失われれば、冤罪を明らかにする力が弱まってしまうのではないかという問いです。

福井事件についても紹介があり、弁護側が存在を知らない証拠について、開示を求めることの難しさが説明されました。証拠の提出だけでなく、どのような証拠が保管されているのかを把握できる仕組みも重要な課題として示されました。

証拠の「目的外使用禁止」と言論の自由

講演の中心となったのは、再審請求手続で開示された証拠の複製等を、手続やその準備以外の目的で使用することへの制限です。

山尾さんは、再審制度の見直しについて、証拠開示に関する前進と、なお残された課題を分けて説明されました。そのうえで、証拠の目的外使用を罰則付きで禁止することが、支援活動や報道にどのような影響を与えるのかについて問題提起されました。

例えば、支援者集会で証拠の写真を示すこと、記者に資料を提供すること、無罪となった本人が自身の経験を本にまとめること。こうした場面で、何が許され、何が禁止されるのかを十分に予測できるのかが問われます。

特に重要な論点として示されたのは、実際に処罰されるかどうかだけでなく、「処罰されるかもしれない」という不安そのものが、発信をためらわせるという点でした。

山尾さんは、禁止される範囲が分かりにくい状態では、弁護人や支援者が慎重になり、社会に伝えるべき問題まで伝えられなくなるおそれがあると指摘されました。言論の自由を考えるうえで、こうした萎縮の影響にも目を向ける必要があります。

プライバシー保護と社会による検証

裁判の証拠には、被害者や関係者の個人情報が含まれます。その名誉やプライバシーを守る必要があることも、講演の中で確認されました。

そのうえで山尾さんは、必要な部分を伏せることや、証拠の性質・使用目的に応じた配慮を組み合わせることで対応できないのか、広い禁止や刑罰が本当に必要なのかを検討すべきだと述べられました。

また、問題は再審だけにとどまらず、通常の刑事裁判や民事訴訟における証拠の扱いにも広がることが紹介されました。司法の問題を検証し、その改善を求めるためには、裁判の外で情報を共有することにも意味があります。

講演の終盤では、捜査によって集められた証拠を、公共的な性格を持つものとして考える視点が示されました。個人情報への配慮をしながら、司法の判断を社会が検証できる環境をどう確保するのか。これは、法律の専門家だけに任せておけばよい問題ではないと感じました。

質疑応答と意見交換

講演後の質疑応答では、冤罪を防ぐために必要な仕組み、裁判記録の保存とデジタル化、取調べのあり方、司法に関わる問題に市民がどう向き合うかなど、幅広い質問が寄せられました。

山尾さんからは、間違いを認め、やり直すことができる社会をつくることの大切さが語られました。そのためには、情報が公開され、市民やメディアが問題を指摘できることが必要だというお話がありました。

また、司法や自由に関わる問題に取り組む人々を、政党や立場の違いをこえて支えていくことの重要性についても意見が交わされました。

開催を終えて

今回の講演会を通じて改めて感じたのは、冤罪を救済する仕組みと、言論の自由を守ることは、深くつながっているということです。

証拠が開示されること。そして、その証拠をもとに、何が起きたのかを社会が知り、考え、必要な改善を求められること。その両方があってこそ、間違いを明らかにし、訂正する力が生まれます。

もちろん、その過程で被害者や関係者のプライバシーを軽視してよいわけではありません。だからこそ、守るべき個人情報と、社会に伝える必要のある情報を丁寧に考え、制度の目的や影響を検証していくことが大切だと思います。

自由未来ラボでは、これからも専門的な問題を市民の立場から学び、立場の違いをこえて考える機会をつくっていきたいと考えています。

ご参加いただいた皆様、ご講演いただいた山尾志桜里さん、開催にご協力いただいたNPO法人うぐいすリボンの荻野幸太郎さん、そして運営にご協力いただいた関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。